稲沢のむかしばなし 万徳寺の池のカメ(稲沢市長野町)
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いまから20年ほど前までは、きみの家のまわりの川にも、カメがすんでいたんだ。子どもたちは、カメをつかまえて、よくあそんだものです。
それをおじいさんにみつかると、
「カメに、おさけをのませて、川へにがしてあげなさい」
と、しかられた。カメはむかしから神さまのつかいものと考えられていました。
ここは、長野村、万徳寺。万徳寺は、この村に、古くからあるお寺です。
客殿のうらには、池がありました。まわりは、木々が、うっそうとしげっていて、昼でもこわいところです。
この池は、寺のまわりをかこむお堀とつながり、そのお堀は、川とつながっていて、いつもきれいな水が、ながれこんでいた。また、この池では、生きものをころすことを、きんじていたので、サカナがいっぱいいた。
万徳寺の池には、サカナのほかに多くのカメもすんでいた。
むかし、この池でサカナをとってはいけない、というきまりをやぶった男が、ひとりいた。友吉という名のその男はサカナがたくさんいるし、カメもいる、この池をほかっておく村人を、バカだと考えていた。ある日、友吉は、池にやってきて、サカナやカメをつかまえた。つぎの日も、つぎの日も、たくさんつかまえて帰っていった。
村人たちは、そんな友吉のするととが、おもしろくなかった。また、おじいさん、おばあさんは、友吉のとってきたサカナやカメに、手を合わせておがんだ。
5日めのこと。いつものように、友吉は万徳寺の池へ、サカナをとりにきた。池に足を入れたとたん、体がピリピリしびれ、うごけなくなってしまった。ボッーと、むこうぎしを見つめていると、白いヘビが、おそろしい顔で、こちらを見ていた。
友吉は、「たすけてちょう」と、さけんだが、だれもたすける人はなかった。青い顔で、家までたどりついた友吉だったが、まもなく死んでしまった。
こんなうわさが、村々にながれた。
「友吉は、万徳寺のカメをとって死んでしまった。カメをみつけたら、万徳寺の池にかえさないと、たたりがあるゾ」
万徳寺のカメは、寺の北の方の畑でタマゴをうんだ。生まれた子ガメは、池に帰るのは少なく、川へほとんど行ってしまった。そして、ちかくの田や川で大きくなった。
そんなことから、カメをつかまえると、万徳寺のカメだと思い、おさけをのませて、池へかえしに行ったそうです。
この池は、いまものこってます。しかし、まわりの木は少なくなり、水はきたなくよどんでいて、もうカメのすがたを見ることはできません。