稲沢のむかしばなし 馬場村のおこり地蔵(稲沢市馬場町)
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馬場町は、明治中学校の東にある町です。この町は矢合町と同じように、うえ木のさいばいがさかんで、はたけいちめんにいろいろなうえ木が、うえてあります。
そしてぜんこくに、しゅっかされています。
むかし、ある夏のあつい日のこと。馬場村に一人のたび人が通りかかりました。あまりのあつさにたび人は、神社のこかげで、うとうととねむってしまいました。
ふと目をさますと、あたりはもうまっくら。しかたなく、夜はここですごすことに、なりました。
つぎの朝、目をさますと体がだるく、高いねつがあるようです。あいにくくすりをもっていなかったたび人は、村の人たちにたのみました。
「何かくすりはないでしょうか」
しかし、どの家もみずぼらしいすがたを見て、ピシャッと戸をしめてしまいました。
つかれはてたたび人は、また神社へやってきました。ふと見ると、そこに小さなおじぞうさまがあるのに、気づきました。
たび人はその前にひざまづき、
「おじぞうさま、高いねつで体がだるくこまっています。おたすけください」
と、おいのりをしました。
一日たち、二日たち、そして三日目の朝とつぜん今までのねつが、うそのようになおってしまいました。
それから、しばらくたったある日のこと。一人の子どもが、おもいびょう気になりました。いしゃにみてもらったところ、
「うーん。これは”おこり”というびょう気じゃ。いちどかかったら、かならずしぬという、おそろしいびょう気じゃ。」
といって、帰ってしまいました。
子どものおかあさんは、どうすることもできず、ただひっしにかんびょうしていました。
そんな時ふと、たび人のことを思い出し、おじぞうさまに、おいのりすることにしました。
毎日、毎日朝早く、いっしょうけんめいにおいのりをしました。
ちょうど一か月めの朝、とつぜんきのうまでのびょう気が、うそのようになおってしまいました。
おかあさんは、さっそくこのことを村の人たちに、つたえました。そしてこの話はほかの村にも、つぎつぎとつたわりました。
その上、びょう気になると、かならずおじぞうさまにおいのりするようになり、いつのまにか、”おこりじぞう”とよばれるようになったということです。
今でも、このおじぞうさまに、おいのりする人は、いるんですよ。