稲沢のむかしばなし 寅吉とホタルの女房
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「寅吉とホタルの女房」というお話です。
むかぁし、むかしある夏祭の夜じゃった。寅吉さんは、お酒をたっぷりのんだ。そして、家へ帰る途中、小川の所でちょっといっぷくをしておった。
すると、ポカー、ポカーと何やら光るものが、ふわふわと目の前を通りすぎていった。
「あれェー。ホタルだ。デッカイホタルだ。」寅吉さんは、夢中になって、どんどん追っかけていった。
「シマッタァ。帰り道がわからんようになってしもうたわい。しかたがねェ、今夜はここでねるとするか。」
しばらくすると、目の前がぼんやりと明るくなった。寅吉さんは目をそっと開いた。すると、目の前には、それは美しい娘さんが立っておった。
「私は、あなた様のようなかたをかさがししておりました。ずっと、あなた様のそばにおいてくださいませ。」寅吉さんは、ポカーンとしておったが、そのことを聞くと急にうれしくなった。そして、さっそく娘さんをつれて帰り、めおととなり仲よくくらしておった。
ところが、ある年の秋のこと。ものすごい台風がやってきて、草木をなぎたおし、川はどろどろによごれてしもうた。ねようとした寅吉さんは、女房がいないことに気がつき、あわてて庭にとびだした。
すると、女房は、体中からまばゆいばかりの光をはなち、みるみるうちに、小さなホタルになってしまった。
「私は、もうここに住むことができません。また、きれいな水を求めて旅に出ます。さようなら、さようならー」
寅吉さんが必死にとめるにもかかわらず小さなかわいらしいホタルは、フワフワと飛んでいってしまった。
それ以来、寅吉さんは、人が変わったように川を造り直し、きれいな水をながして、女房が帰ってくるのをまっておった。しかし、ホタルはたくさんくるようになったが、女房は二度とかえってこなんだそうじゃ。