稲沢のむかしばなし 長光寺の汗かき地蔵(稲沢市六角堂町)
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六角堂町に伝わる「長光寺の汗かき地蔵」というお話です。
「ねぇ、お姉ちゃん。お堂の方がさわがしいよ。ちょっと行ってみようよ」
ここは、六角堂町の長光寺の境内。お堂のまわりには、たくさんの人がひざまづき、手を合わせてお経をよんでいる。その人の数は、ざっと300人。
そして、お寺の門の方には、まだ多くの人が、列をつくっている。ふたりの兄弟は、人がおまいりしている地蔵堂を、のぞいてみた。
おや、不思議なことに、お地蔵様が汗をかいていらっしゃる。それも、頭から首、胸にかけてまるでわき水のように。そして、近くの人が急がしそうに、手ぬぐいで、一生懸命汗をふいている。
しかし、ふいていても、汗はふき出してくる。
しばらくして、汗はやっととまった。
ふたりの兄弟は、近くのおじいさんにきいてみた。
「ねぇ、おじいさん、どうしてお地蔵様が、汗をかいているの」
「うん、それはなぁ、坊や、このお地蔵様は、もう千年も前からこの村を守ってくださる、えらいお地蔵様でなぁ。病気を治したり、子どもがほしいという人には、子どもをさずけてくれるんじゃ。」
「ふーん、すごいなぁ」
「でもなぁ、それよりびっくりすることは、大きな事件や天災がおこるとき、今のように汗をかいて知らせてくれるんじゃ」
「じゃあ、最近はどんなときに汗をかいたの」
「うん、そうじゃのう、ここ30年ほどの間では、太平洋戦争の始まるときと、終わる年の前だったな。ああそれから、あのものすごい伊勢湾台風が、くる前の年だったかなぁ。でも今度は、でっかい地震がくる時かもしれねぇぞ」
「ふーん、じゃあとてもえらいお地蔵様なんだね」
「ああ、だからお地蔵様の前では、必ず手を合わせて、おがむんじゃよ」
「ふーん、わかった。僕も手を合わせて、おがまなくちゃあ」