稲沢のむかしばなし 大ぼうず
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むかし、むかし。千代田村に孫平というおひゃくしょうさんが住んでいました。
ある日、どこから来たのかわけがわからんが、それはおそろしい大ぼうずが、村はずれの一けん家に住みついてしまいました。
孫平は、いつものように畑で仕事をしています。
「今年は、ええ大根が出来たわい。よいしょ。よいしょ」とつぶやきながら孫平は大根をぬき、重い大根を何本も何本も馬車につみこみました。大根を馬車へつみおえた孫平は、ひとやすみすると、馬車を”シャンコン、シャンコン”とならしながら、家へむかいはじめました。
”ズドーンズドン。ズドーンズドン”。じひびきが、あたりにひびきわたりました。孫平は、もうびっくり。あのおそろしい大ぼうずがじひびきの音とともに孫平の目の前までやって来たのです。
さあ、たいへん。
「孫平や──。そのおいしそうな大根を、わしによこせ──」
「どうかごかんべんくだせえ・・・・・・」と、孫平はひっしに大ぼうずにたのみます。
「大根をわしにくれんと、おまえの馬をたべちゃうぞ──」
「ははぁ・・・・・・だだ・・・・・・大根をぜんぶさしあげますので、どうか馬だけはごかんべんくだせえ・・・・・・」
「よしよし」
”ムシャムシャ。ムシャムシャ”と大ぼうずは大きな音をたてて大根をたべてしまいました。
「孫平。おまえの大根は、ものすごくおいしいなあ。おまえのその馬もおいしそうだな。まだ、腹がへっとるで馬もわしによこせ──」
「ごかんべんくだせえ・・・・・・」と、孫平はひっしにたのみます。
「わしに、馬をくれんとおまえをたべちゃうぞ──」
「ははは・・・・・・。どどどうぞ馬をめしあがってくだせえ」と孫平はなきなき言いました。
大ぼうずは、みるみるうちに、馬をたべていきます。今度は、自分がたべられてしまうと思った孫平はいちもくさんににげ出し、村のはずれの家へかくれました。村はずれの家とはあの大ぼうずが、住んでいる家なのに・・・・・・。
”ズドーンズドン”。さあたいへん。大ぼうずが近づいてきます。
「アーアー。今日は大根もくったし、馬もくった。もう一つあの孫平をたべたかったわい」と、大ぼうずがひとりごとをいいながあら、家の戸をあけるではありませんか。
孫平は、みつかったらたいへんです。ぶるぶるふるえながらじっとしていました。
「腹がまんぷくになったで、おかまの中でゆっくりあたたまってからねるとするか──」といって、大ぼうずはおかまに水を入れて火をたきました。
「あーあ。いいゆだ──」といいながら、大ぼうずはおかまに入って、はなうたをうたいます。そのうち大ぼうずは、いびきをたてながらおかまの中でうとうととねてしまいました。
”ゴー、ゴー”
「大ぼうずめ、よくも大根と馬をたべてくれたな。馬と大根のかたきだ」
孫平は、大ぼうずのはいっているおかまにふたをしめ、大きな石をのせて、おかまのしたから火をどんどこ、どんどことたきました。
「アチィチチ、アツイヨー。アツイヨーなにをする」
「大根と馬のかたきだ」
「ゆるしてくれ、アツイヨー。もうぜったい悪いことをしないから、ゆるして」と大ぼうずは、あやまりました。
その後、大ぼうずはめいわくをかけた村の人たちのためにいっしょうけんめいにつくしたとさ。
めでたしめでたし。