稲沢のむかしばなし 浅井のお薬師様(稲沢市浅井町)
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みなさんは、薬師様を知っていますか。ほんとうの名を薬師如来と言って、病気になった人の、からだのわるいところをなおす仏様です。
このお話は、浅井町の浅井神社にある、お薬師様を守っていた人が、しにかけ、それを村人たちがいのって、生きかえらせるお話です。
いまから70年ほど前、お薬師様を守っていた人が、どういうわけが、しのうとしました。そして、口からアワをだしてたおれていました。そのとき、ぐうぜんお薬師様におそなえをもって来た女の子がそれを見つけて、
「どっ、どうしたんじゃ。しっかりしてちょう。いま、お医者さんをよんでくるからなぁ」と言って、医者をよびに行こうとしました。
そのとき、ぐうぜん、物知りのおじいさんがとおりかかり、
「コリャァ。西御堂村の成願寺の和尚様をよんで、お薬師様にたのむとええよ」
そこへ、村人もかけつけ、
「よし、わしが和尚様をよんできたる」
と言いながら、北の方にふっとんでいきました。
「おっ、和尚様。わしんとこの村の者が、口からアワをふいて、ヒックリかえちゃったあ。たのむにたすけてやってくれい」と和尚さんにたのんだ。
そして、和尚様と村人は、浅井村へかけつけた。
和尚様は、お薬師様の前にたち、なんだかわからないおまじないをしはじめました。
「ハンザーヨー・ギンヨーナーレ、ハンザーヨー・ギンヨーナーレ」
和尚様は、
「村のしゅう、おみゃあさんらも、おいのりせい」と大声でいいました。
ぼうっと、立っていた村人たちは、ビックリしながら、手を合わせていのりはじめました。
すると和尚様は
「お薬師様は、たおれた人が息をふきかえす。息をふきかえすといってござる。みなのしゅう、もっとしっかりいのるんじゃ」とおしゃった。
しばらく、みんなでいのっていると、
「ウッ、ウッウー」と、たおれた村人は、なにかうわごとを言いました。
「おっ、息をふきかえしたぞー」とそばでみていた人が言いました。
和尚さんが、お薬師様からおつげがあったとおり、息をふきかえしました。まもなくして、たおれた人は元気になった。
このうわさを聞き、となりの村からも、多くの人たちがおいのりにやってきて
「ここのお薬師様は、しにかけた人を、おたすけになったらしいのう」とか、「西御堂の和尚さんをつれてきて、いっしょにおまみゃありすると、すぐになおるぞう」などと、いろんなことを言って、まいっていました。
ここのお薬師様は、どんな病気もなおてしまうことでゆうめいになりました。そして、あちらこちらで、おいのりしていた人が、
「20年間も、いたかった、足やコシがなおってまったあ」とか、「聞こえんかった耳が、聞こえるようになったわゃ」と、にこここして話していました。
このお薬師様は、ずっとむかしは、神社のすぐ前にある、広い畑にたっていた大きなお寺の仏様であったらしいですよ。
また、このごろでは、おいのりにくる人はほとんどいないそうです。