稲沢のむかしばなし 消えた藤市(稲沢市治郎丸町)
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稲沢市の北東部にあたる治郎丸町の「消えた藤市」というお話です。
むかァーし、むかし、大江川のほとりに「藤市」という名のお百姓さんが住んでおった。藤市は魚が好きで、川へ行ってはよくうなぎを取っておった。
6月のある日のこと、藤市は、いつものように川でうなぎを取っておった。
「今日も、大きなうなぎが取れますように。どーれ、かごを上げて見て見ようかなー。よいしょっと。あれっ。このうなぎ、耳があるぞー。」
藤市は、さっそく家に持ち帰り、かごの中に入れておいた。ところがじゃ。その日、夜もふけて藤市が寝どこに入ろうとすると、どこかきみょうな声がする。」「うぅぅぅ。と、と、藤市ー。よくもおれさまを取ってくれたな。今からそっちに行くぞぉー。」
びっくりした藤市は、恐る恐る回りを見まわした。けれども誰もおらん。
「なんだぁ。気のせいか。」
ホッとしてねようとすると、また、きみわるい声がする。
「とういちー。そっちに行くぞー。かくごしろー。」
藤市は、まっ青になって、声のする方へふるいながら近づいていった。
すると、今日とったばかりのうなぎのはいっているかごの中から、聞こえてくるではないか。
藤市は、よけいにおそろしくなって、「ああァー。川の主様、どうかおゆるしをー。」といって、かごをひっかけて、そとへとび出していった。
それ以来、二度と藤市は帰ってこなんじゃそうじゃよ。
君も、さかなとりがすきですか。耳のあるふしぎなうなぎを取ったらにがしてやろうね。コワイゾー。