稲沢のむかしばなし 行人橋2(稲沢市下津町)
- [更新日:]
- ID:2561

下津に伝わる「行人橋」というお話です。
昔々、下津町の青木川のほとりに、「てんぽういん」という、お坊さんが住んでおった。
このお坊さんは,とてもえらい人で、けわしい山に何日も何日もこもって、それはきびしい修行をしておった。
ある日、下津町に帰ったお坊さんは、断食といってな、食事をまったくとらず、ただじっとすわって、さとりを開くことになった。
そんなもんで、村の人もこのお坊さんのそばを通るときは、必ず手を合わせたもんだった。
ところが、あまり修行がきびしかったもんで、体はやせおとろえ、とうとう死んでしまった。
それから、どれくらいたったかいのう。百姓の権兵衛さんが、畑を耕しておった時にな・・・・・・
「とうしたんだろ。こんなに暖かいのに、寒けがする。おまけに腰まで痛くなってきた。」
といって、とうとうねこんでしまった。
家の人たちは、町の医者にみてもらったり、高い薬を飲ませたりしたが、まったく治るけはいがない。
そんなもんで、一度、占い師にみてもらうことになった。
「うんじゃらじゃら、うんじゃらじゃら、エーィ!」
するとどこからか、声が聞こえてきた。
「わしは、ここに住む“てんぽういん”の魂じゃ。だれか、わしが安らかに眠れるよう、祭ってくれ」
村の人たちは、さっそくお坊さんに、お経をあげてもらい、魂を祭ることにした。
そうしたら、いつのまにか権兵衛さんの寒けは治り、腰の痛みも直ってしまった。
それ以来、青木川にかかるこの橋を、てんぽういんの名にちなんで、修行をする人の橋、つまり、行人橋というようになった。