稲沢のむかしばなし 行人橋1(稲沢市下津町)
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稲沢市の東の方にある下津町を流れる青木川の「行人橋」というお話です。
下津の国府町から一宮市丹陽町の五日市場へ行くためには、青木川をわたらねばなりません。この川にかかっているのが「行人橋」です。この橋にまつわる話です。
今からズーットずっと昔のこと。青木川に大きな木の橋がかけてあった。いつのころか、旅のお坊さんがここへやってきた。
「わしも日本各地をまわって、いろんな修行をしてきた。おかげですっかり年をとっとしまったわい。よし、ここを最後の修行の地としよう。」
お坊さんは、はらを決め、さっそく修行の準備にとりかかった。
「ああ、そこをとおる村の人よ。わしの、たってのねがいを聞いてくださらんか。わしは、これからきびしい修行にはいるので、最後まで見とどけてもらいたい。わしは、ここに穴をほって中にはいる。しかし、竹筒を少しだけ出しておくので、お線香のけむりが出ている間はわしが生きていると思ってくだされ。」
そう言うと、さっそく穴をほり中へ入ってしまった。しばらくの間は、竹筒から煙が出ていた。それを見て村の人たちや旅の人たちは手を合わせた。
しかし、いく日かたったある日。きびしい修行のせいかとうとう、お線香のけむりは絶えてしまった。村の人たちは、さっそくお坊さんの霊をなぐさめるため塚を作った。これが、「行人塚」とよばれたが、いつのまにか、この塚もわすれられた。それ以後、橋だけが残って「行人橋」とよばれるようになったということじゃ。
昔は、この話のようにきびしい修行によって死んでいくお坊さんが多かったそうですよ。