稲沢のむかしばなし 観音寺のむじな(稲沢市松下町)
- [更新日:]
- ID:2556

松下町に伝わる「観音寺のむじな」というお話です。
昔、観音寺のうらには、おおきなやぶがあった。そしてそこには、むじなたぬきの親子が、住んでおった。
このたぬき、夜がふけてくるときまって「クーン、クーン、クーン」と、もの悲しくないておった。
おしょうさまは、このむじなたぬきを大変かわいがり、お経から帰ると、いつも頭をなでながら「よいか、いたずらをするでないぞ。悪いことをせんかったら、いつまでも、ここにおってよいからのう」と、やさしく、声をかけておった。
しかし、若い小僧さんたちは、おしょうさまがるすのときは、いつも、子どものむじなたぬきをつかまえては、すもうを取らせたりしてからかった。
ある日の夕方のこと、おしょうさまが、となりのお寺へおでかけになったとき、小僧さんたちはおつとめを終え、戸をしめて、おしょうさまの帰えりを待っておった。しばらくして、勝手口から、戸をたたく音が聞こえてきた。
「ペタンペタン、トントン、ペタンペタン、トントン」
小僧さんたちは、おしょうさまが帰ってきたと思って、戸をあけに行った。
「ヘーイ、ただいまあけます」
ガラッと戸をあけたが、だれもおらん。変だなあと思いつつ、戸を閉めた。すると、また音がする。
「ペタンペタン、トントン」
しかし、戸をあけるとだれもおらん。小僧さんたちはだんだん気味がわるくなってきた。
真夜中になって、おしょうさまが帰ってきた。小僧さんたちは、さっそくこの話をした。
するとおしょうさまは「はっはっは、お前たちが、子どものたぬきをいじめるもんだから、親のたぬきがしかえしにきたんじゃよ。これからは、よわいものをいじめてはいけないよ」とおしかりになった。小僧さんたちがきいたこの音、おしょうさまがおっしゃるとおり、親のたぬきがさか立ちして、しっぽで戸をたたいて、小僧さんたちをからかっていた。