稲沢のむかしばなし やねの上のにわとり
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動物は、天気にびん感です。地しんなどを感じる力も人間より、ずっとずっと大きいといわれています。
これは、地しんの前にさわぎ出し、屋根の上にあがって、ないたり、行ったり来たりするにわとりのお話です。
その年の冬は雪のふる日が多くありました。ハダをさす伊吹下しがふき、どんよりくもっていると、たいてい夕方から雪がまいおりて、くるのでした。
そう、昭和21年1月13日のことです。
あたたかい日が二、三日つづいたので、雪はとけ、朝は、道がカチカチにいてついていましたが、お昼にはとけて、グチャグチャの道になっていました。健太たちはそんな道に足をとられながら学校から帰って行きました。
お宮近くまで来ると、森の上を鳥たちがなきさわいでいました。
「なんだ、あれは!」
健太は、くるったようにとんでいる鳥を見て、さけびました。
いっしょにいた友だちも、ふしぎに思うよりも、なんだかこわくなり、急ぎ足で歩きはじめました。
その時です。
青白い光が空を走りました。
晴れた空に光が走るなんて、しんじられないことです。
みんなも思わず立ち止まり、あたりを見まわしました。
目をこらすと、遠くのけしきがゆれています。──かすかに、地面がゆれています。
「地しんだ!」
「あっ、そうだ、地しんだ!」
みんながさけんだと同時に「ゴーッ」と、ぶきみな遠なりが聞こえました。
あたりが、うす暗くなったみたいでした。
地面がうねるように動き、はげしくゆれ始めました。
にげはじめた子も、ゆれとぬかるみに足をとられ、次々ところびました。
────これがあの三河地しんだったのです。
健太の家でも、大さわぎでした。カワラは半分ほど落ち、家も少しかたむいていました。
ふしぎなことに、にわとりが屋根の上で行ったり来たりしています。
「お母さん、にわとりが・・・・・・」と、ゆびさしても、お母さんは健太を見るなり、
「竹やぶへ、行っとりゃあ!」と、言いました。
健太は、なぜっとききただすこともできない顔でした。健太は、竹やぶのほうへ急いで行きました。
そして、じっとしていました。
一度、地しんがくると、よしんがなん度かやって来るのです。
夕方、家中のものが竹やぶに集まりました。竹やぶは、根がたくさんはっているから、安全だと教えてくれました。
次の日の朝、健太が家を見ると、まだ、にわとりが屋根の上にいました。
この地しんは、マグニチュード7で、なくなった人は1,960人だったそうです。