稲沢のむかしばなし まきあすび(稲沢市片原一色町)
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片原一色は、稲沢市の西のはずれにあります。西がわは、祖父江町で、川をへだてているだけです。いまでも、片原一色町には、こんな歌がのこっています。
”ヨメいりするなら いしきへおいで お地蔵さまでも まきあすび”
むかし、この村のじまんの歌だったそうです。
むかしから、片原一色村は、お百姓さんがはたらきものだ、ということでユウメイだった。この村では、おじいさんから、10さいの子どもまで、まい日はたらいていた。
おヨネばあさんも、この村へヨメにきて、50年。まい日、まい日、はたらきずめ。
とうちゃん、むすこは、クワをもって畑へ。朝出かけると、夜まで帰りません。夜も、夕食を食べおわるとナワをなったり、ワラジ(ぞうり)をつくったり。ねているときのほかは、はたらきどうし。おヨネさんは、この村にヨメにきてからのことを思い出していた。
朝まだくらいうちにおき、ゴハンのようい。いまのようにデンキやガスがないから、ごはんは、“くど”でたきます。おカマの中にお米をひたし、くどの上にのせます。マキのこまかいのを、くどの入れ、“ひふき”で火をおこします。ごハンを、じょうずにたけば、一人前だったのです。
家の中のせんたくものを、井戸の水でゴシゴシあらっていると、ニワトリの
「コケコッコォ―(朝だよ、おきなさい)」
というなき声が聞こえてくる。
そういえば、冬の日のせんたくは、ゆびがはれ、手がいたくなりながら、いっしょうけんめいやったものだ。
「ほんに、どえらい(たいへん)えらかった(つらかった)」
朝食を食べると、すぐ畑へ。子どもができたときなど、おしめをかえたり、おっぱいをあげたり、体が二つも三つもほしかった。
日がとっぷりとくれたころ、家に帰って夕食のしたく。ランプのあかりは、食事をするところだけ。井戸端で、月あかりをたよりに、あとかたずけ。夜は、つくろいもの。───
いつも、ねむのは、いちばんさいご。
それぐらいはたらいても、おばあさんは、
「このごくつぶし(なまけもの)、こんなヨメは、うちにいらん。さっさと、ざいしょへ帰ってしまえ」
と、いじめた。そんなときは、えらいところにヨメに来た、とよくないたものじゃ。
おヨメさんたちは、4月8日のお釈迦さまの日、7月24日のお地蔵さまの日は、気がねせずあそばしてもらえた。そのうえ、片原一色村では、そのあと二日づつ、よぶんにあそぶことができた。このことをおヨメさんたちは、よろこび、歌にまでなったんじゃ。
”ヨメいりするなら いしきへおいで お地蔵さまでも まきあすび
ヨメいりするなら いしきへおいで お地蔵さまでも まきあすび”