稲沢のむかしばなし へびのなみだ(稲沢市下津町)
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下津小学校の北に、蛇池というところがあります。このあたりは、名前のとおりヘビが多く、いまでも下津小学校の教室まで、ヘビが入ってくることがあります。
むかし、むかし、下津小学校のあたりは池でした。
この池には、月のあかるい夜になると、うつくしいムスメが、池のふちへあらわれるという、うわさがありました。しかし、まだそのムスメを見たものは、ひとりもいませんでした。
ある月夜のばんのこと。
猟師(ドウブツをころして、お金もうけをする人)のわかものが、池のよこを通りかかった。すると、池のむこうに、だれかいるような気がする。
よく見ると、うつくしいムスメではないか。月あかりで、池にすがたをうつして、黒く長いかみを、くしでとかしている。
あまりうつくしいので、うっとり見とれてしまった。しばらくして、男のカゲが池にうつったのか、ムスメは頭をあげた。おたがいに、目と目があってしまった。
そのときのムスメの目は、あやしい光をおびていた。わかものは、きゅうにこわくなり、テッポウを思わずぶっぱなしてしまった。
“ズドーン”
タマは、ムスメの右目をかすって、後ろの方までとんでいった。うたれたムスメは、右目をおさえながら、池におちてしまった。つぎのしゅんかん、ムスメはたちまち大きなヘビとなり、天へかけ上っていった。上がりながら、ヘビは左目でピカッと光を出し、きづついた右目からは、大つぶのなみだを、たきのようにあふれ出た。
池の水は、たちまちあふれだし、あたりの田んぼまでうめつくしてしまった。この大水のため、わかものは、にげおくれ、おぼれて死んでしまった。
それからというもの、天へ上った大きなヘビは、キズがいたむたびに、村人をくるしめたという。左目からは、ピカッとイナズマを、右目からは、たきのような大水を、天からふらせたということです。
青木川が、きちんとされたいまでは、少なくなった。それまでは、大雨のため、川ははんらんし、下津のあたりは水びたしになったそうです。