稲沢のむかしばなし ふしぎな金色のカミ(稲沢市片原一色町)
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ひいおばあちゃんが、まだ小さかったころの話。稲沢の西の方、片原一色町の西をながれる日光川のちかくでのできごとです。
「こんばんは、おフロをかしてください。おねがいしますだ」
ひとりの、よごれたみなり(ふくそう)のムスメが、ある家でフロをかりようとしていた。ところが、あまりにきたないムスメのようすに、おかみさんは、ピシャリと戸をしめてしまった。ムスメは、つぎつぎと、ほかの家をたずねた。
しかし、どの家でも、ムスメのすがたを見ると、ピシャリと戸をしめてしまった。こまったムスメは、それでも村の家をまわった。そして、村はずれの小さな家へと、やって来た。
「ああ・・・。この家でさいごだ。ここの村の人は、なんてふしんせつなんだろう」
ムスメは、おずおず声をかけた。
「こんばんは、おフロをかしてください」
もう夜もふけて、おじいさんは、ねようとしていたが、ムスメの声を聞くと、重いこしを上げた。ムスメのみずぼらしいすがたを見ると、おじいさんは、にこやかに、
「ああ、いいよ。わしも、いま出たばかりだから。ゆっくりと、あったまっていきなせぇ」
おじいさんは、さっそくムスメをフロにあんないして、自分は、マキをくべに行った。
このしんせつによろこんだムスメは、つぎの日も、つぎの日も、おじいさんの家をたずねた。そして、まずしく・ひとりぐらしのおじいさんの話しあいてをしてやった。おじいさんは、だんだんムスメが、かわいくてしょうがなくなった。
おじいさんはムスメが来るようになってから、ひとつふしぎなことを、みつけた。ムスメの帰ったあとのフロには、いつも一本の長い金色の毛が、ういていたのです。
「うーん、この長いものはなんじゃろ(何だろうか)。わしの頭の毛は白いし、こんなに長くはない。きっと、あのムスメのかみの毛じゃな。しかし、ふしぎな色をしたかみの毛じゃなあ」
その長いかみの毛が十数本たまったころ、ムスメは、パタリとこなくなった。
「はて、どうしたんじゃろ。あの子は、びょう気でもしたのだろうか」
心やさしいおじいさんは、ムスメのことがしんぱいでたまらなかった。
ある日のこと。おじいさんが、畑でしごとをしていると、とおくの方からキツネのなきごえが、うれしそうに───。
”コーン、コーン。おじいさん、ありがとう、ありがとう───コーン、コーン”
おじいさんは、家に帰ってみると、ムスメがのこしたかみの毛が、金色のコバンにかわっているではありませんか。
「さてはあのキツネ。フロにいれてやったおれいに、この金をくれたのか」
と、なみだをながしたそうです。
きみも、人を外見だけではんだんせず、だれにも、しんせつにしてあげようネ!