稲沢のむかしばなし ツルのにく(稲沢市下津町)
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いまから100年ほど、むかしのことです。まだ、よの中は江戸時代といい、徳川さまが、天下をおさめていました。これは、いまの下津町でおこった、”ツル”にまつわるお話です。
下津村の八幡社のまわりには、大きな竹が、ニョキ・ニョキはえていました。その竹やぶの中に、大きなマツの木があり、天にもとどくほどでした。
ある日、大きなツルがやってきて、その大きなマツのてっぺんに、すをつくったのでした。このことは、すぐ下津村でうわさになったということです。
ところで、下津村をおさめる代官は、たいそうわるい人で、村人たちに、おもいゼイ金をかけていました。そして、自分は、ぜいたくをして、くらしていました。
サクラのさきはじめたころのこと。源八さんの家のヤネをとばすほどの強い風が、下津村をおそった。
村の人々は、ツルのことが、しんぱいになり、八幡社へあつまりました。ツルはだいじょうぶかと、天をあおげば、マツのえだにツルの首がからまり、もがいていました。・・・バタ・バタ・・・バタ・・・ツルのはねの音はだんだん弱くなり、ついに、しんでしまいました。
どうしたものかとそうだんしましたが、とにかく源八さんが代官所へ、とどけることになりました。代官所に、カクカク・シカジカとわけを話すと、代官は、こういった。
「ほう、ツルはしんでしまったか。わしは前からツルのにくを、いつか食べてみたいと思うとった。ツルのにくを、ここへもってきてちょう」
源八さんはとんでかえり、庄屋さんにこのことをつたえました。
わるい代官のいうことだが、後のしかえしがこわいので、ツルのにくをもっていかなければなりません。どうやってツルをとるか考えましたが、ツルは、大きなマツのてっぺんです。
「わしにいかしてちょう!」
村でいちばんせのひくい長七さんは、そういうのがはやいか、さっさとのぼっていきました。
30分もたつと、マツのてっぺんにたどりつきました。長七さんは、ロープをつかってツルをおろしました。
くろうして、とってきたツルです。わるい代官に、ツルが食べられるのが、かわいそうになりました。村人たちは、しばらく考え、源八さんと庄屋さんが、代官所へ出かけていきました。
二人は、おそるおそる代官にさしだすと、
「ほう、これがツルのにくか。どれ、一つ食べたろかい。―(パクッ!クチャ・クチャ)これは、おいしいのお」
こうして二人は、ぶじに帰りました。
このとき代官が食べたにくは、ニワトリのにくだったそうです。また、ツルは、村人の手で、マツの木の下にうめられました。