稲沢のむかしばなし タヌキのいたずら(稲沢市儀長町)
- [更新日:]
- ID:2535

儀長という町は、いまから30年ほど前、みかんのなえ木でゆう名になりました。
この儀長と、となりの町の馬場の間に、お墓が、むかしありました。ここに、ずるがしこいタヌキがすんでいて、よく村人をだましたそうです。
いまから、百年ほど前のことです。馬場から儀長へいく道のとちゅうに、お墓がありました。このお墓には、タヌキがすんでいて、人をだますという、うわさがながれていました。しかし、まだタヌキを見た人は、ひとりもいませんでした。
タヌキにだまされた人がいうのには、
「おらが、儀長の友だちの家に、みやげをもってったんだわ。あそこの墓までいくとなも。べっぴんさん(うつくしいむすめ)があらわれて、わけのわからんうちに、はだかにされてしまった。ありゃあ、たぬきのしわざに、ちぎゃあねゃあ(まちがいない)」
さて、儀長の義助さんは、山口村のおまつりに、でかけていった。
タヌキは、この日朝から何も食べていなかった。いつものように、墓の前に立っていると、むこうから義助さんがやってくる。
「こりゃあ、ええど。あいつをだましたれ───では、坊主にでもなるか」
というと、“ボコッ”という音とともに、きえてしまった。
しばらくして義助さんが通りかかると、とつぜん目の前にそれはそれは大きなお坊さんが、ひょいとあらわれました。お坊さんがあらわれると、あたりはまっくらになり、義助さんは帰り道がわからなくなってしまった。お坊さんは、
「義助さん、おいしそうなごちそうじゃのお。わしに、ちょうせんか(ください)」
といって、手を前にさしだします。
義助さんは、へんなことをいうお坊さんだ、と思いながらお坊さんをよく見るとシッポがある。
「おまえ、タヌキだな。人をだませると思っちょるのか。おんぼ(しっぽ)がでとるぞ!」
そういうと、義助さんは、もっていたツエをふりあげた。
「いや、わたしは坊主だ、坊主だ───」
「このタヌキ、あくまでしらをきるつもりかあ!]
といって、義助さんは、お経をよみはじめた。
すると、ふしぎなことに、大きなお坊さんは”ボコッ”という音とともに、きえてしまった。
「義助さん、もう人をだましません。ゆるしてくだせえ」
あたりは、前のように明るくなり、義助さんは家に帰れたそうです。このときから、タヌキのうわさを聞かなくなりました。
めでたし、めでたし。