稲沢のむかしばなし きえたスイカ
- [更新日:]
- ID:2523

むかし、むかし、あるところによくばりなおじいさんがいました。このじいさま、村の人たちから、「ごうつくじいさん」とよばれ、きらわれていました。
たぬきのポンタも、ごうつくじいさんのために、ないてばかりいました。
「くそぉ、あのじいさんめ、きっと今に目にものを見せてやる、ポン。この村をさるのはつらいが、西の山でタヌキとしての勉強をしてくるんじゃ、ポン、ポン」
と、ポンタは、ばけるしゅぎょうに、西の山に行きました。
それから数年。ごうつくじいさんは、ますます元気で、村のものをいじめてばかりいました。いつものように、村はずれの小さな家で、村人たちの話を聞いています。
「ことしは、えろうあついのぉ。こんなにあつては仕事にならんわ」
「あんまりあついもんで、たびをする人たちが、スイカくれ、ウリくれって──水けのものが食べたなるのはいっしょじゃからのぉ」
「ほんとに、こうもあついと、スイカのつるもかれてしまうわい」
と、おしゃべりしながら、となり村の方へ行きます。
ごうつくじいさん、はたと手をうち、「そうじゃ、たびをする人たちに、スイカを売ったろ。こりゃあ高い金でも買わっせるで、もうかってしょうがないぜ。さっそく店をつくらな」
ごうつくじいさんは、家に帰ると、さっそくかんばんを出した。『スイカあります、あまくて、安いスイカ』と。次の日から、ごうつくじいさんのもうかること。たびをする人たちは、ちょうど、じいさんの家の前あたりへくると、のどがかわき、水がほしくなるのです。そんなところへ『スイカあります』のかんばんが見えれば、だれでも手を出してしまいますから・・・。
3日めのこと。あまりにももうかるので、じいさんは、スイカのねだんを、ばいにしました。ごうつくじいさんが、たびをする人たちにスイカを売っていると、みすぼらしいかっこうをしたおじいさんがやって来た。
「じいさま、わしゃぁ、このとおり、お金を持ってねぇだ。ほんでも、のどがからからで、どうしょうもねぇだ。ひとつ、スイカをめぐんでちょう、ポン」
「ばかこけぇ、このこじきじじいが、おめえなんぞにやるスイカはねぇわ・・・」
「えりゃぁ、ごうつくばったじいさまじゃのぉ。これ、たびの人、そのスイカのタネを、わしにくださらんか、ポン」
と、スイカのタネをもらうと、道に、ツエでせんをひきはじめた。すると、そこは畑にかわってしまった。じいさんは、さっそくタネをまくと、こう言った。
「さあ、スイカさん、はよう、わしにスイカ食わしてちょうせんか」
すると、タネをまいたところから、めが出てきて、ツネがのび、みるみるうちに、大きなスイカがなりました。じいさんは、手近なスイカを手にとると、ポン、ポンと手ではじき、二つにわりました。それは、まっ赤で、おいしそうなスイカです。
「これ、みなのしゅう。わしだけでは、こうも食えんで、みんなで食べてちょう」
たびの人だけでなく、ごうつくじいさんも、いっしょになって、このふしぎなスイカを食べはじめた。あんまりいっしょうけんめい食べたものだから、スイカは、あと一つになってしまった。
みすぼらしいたびのじいさんは、このスイカをかつぐと、ヒョコ・ヒョコと、西の方へ行ってしまった。
いじわるじいさん、いざ、しょう売をはじめようと、店の方を見ると、山のようにあったスイカがなくなっています。また、『スイカあります』のかんばんが『ごちそうさま、ポンタ』にかわっています。
「ちきしょう。ポンタにうまくしてやられたわい。きっと、さっきスイカを食べていたものは、みんなタヌキにちげえねぇ。まいった、まいった・・・」
じいさんは、ポンタにだまされはしたが、しばらく顔を見せなんだポンタが元気になり、ばけるのもうまくなったのを見て、なみだをながしたそうです。
人はだれでも、ねはいい人なんですよ。めでたし、めでたし。