稲沢のむかしばなし お坊さんと馬(稲沢市下津町)
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下津町に伝わる「お坊さんと馬」という、お話です。
今から、700年も前のこと、下津は、京都と鎌倉を往き来する人で、にぎわっていた。
そして、旅人が泊まる宿も、たくさんあった。
さて、むし暑い夏の夕方のこと。宿屋の前で、お坊さんたちが、すごろく遊びをしておった。
「さあ、今度はわしの番だぞ。それっ、あっ、6だ。あともう少しであがるぞ」
「がんばれよ」
ちょうどそこへ、馬を引きつれた馬子が、通りかかった。そのときである。突然、ピカッと青いヒカリが、空を走った。
「ピカッ、ゴロゴロゴロ、ピカッ、ゴロゴロゴロ・・・・」
お坊さんも馬子も通行人も、びっくりして、いっしゅん空を見上げた。そして、家の中へと、飛び込んで行った。
しかしこのとき、大きな音におどろいたのか、一頭の馬が、馬子の手からぬけ出し、横で小さくなっていた、お坊さんの背中に、のりかかった。そばにいたお坊さんが、叫んだ。
「はよせんと、馬におしつぶされてしまうぞ」
馬子はあわてて、馬を引きもどそうとしたが、びくともせん。とうとうお坊さんは、その場にひっくり返ってしまった。
みんなはお坊さんを助けようと必死になって馬のたずなを、力いっぱい引っぱった。そして、やっとのことで、お坊さんを助けおこした。
「お坊さん、しっかりしてくだせえ」
「お坊さん、起きてくだせえ」
しばらくして、お坊さんは、”はっ”と気がついた。そして、自分ですっと、立ち上がった。しかし、おどろいたことに、どこにも”ケガ”をしとらん。それに、着物や紫のけさは、すこしも破れておらなんだ。
「へえー、あんな大きな馬にのられても、なんともねー。どうなっとるんだべー」
まわりの人たちは、びっくりした。そして、
「こりゃ、仏の力が、坊さんを救ったんだ」と感心しておった。