稲沢のむかしばなし お太子さまが降ってきた(稲沢市平町)
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いまから、130年まえのこと。
総合グランドの西の平町ふきんでおきたお話です。お百姓さんの家に、神社のお札や仏像がふってくるという、かわったことがおこったのです・・・。
稲刈りが終わったころ、あたりは暗くなってきました。平村のよ平さんは、つかれきったようすで、わが家へ急いでいました.
「今年も、稲はあまりいいできではなかったわい。しかし、やっと終わったで。今夜は、酒でもゆっくりのもうかナァ」とよ平さんは、ひとりごとを言いながら、村へ入っていきました。村は、なにかいつもとちがっていました。家のかど(庭)まで来ると、村人たちがよ平さんの家をのぞきこんでいました。よ平さんが、あわてて家に飛びこむと、おっかあが土間にすわりこんで、おじぎをくりかえしていました。
「おっかあ。なにをしとるんじゃ」
「あっ、おっとう。たいへんじゃ。家のかどに、空からお札様がまいおりてきたぎゃ」
よ平さんがよく見ると、それは『伊勢の大神宮のお札』でした。しかも、しんぴんのものでした。
「これはたいへんだ。空からまいおりてきたものなら、ほかっておいたら、バチがあたるかもしれんぞ」
よ平さんは、さっそく、ざしきに、『さいだん』を作り、カキやまんじゅうをおそなえして、おまいりしました。村人たちもふしぎなことだと言って、おまいりに来ました。よ平さんは、おまいりに来た人に、あわててついたモチをわたしました。
ふしぎなことに、お札様は、あくる日から、よその家にもつぎつぎとまいおりてきました。
東どなりの太助は、
「わしの家には、津島神社のお札がふってきたわい」
西どなりの平八は、
「わしんとこには、熱田神社のものだョ」
そして、3日目には、大工の義助の家に、かわったものがふってきました。
「村のしゅう。たいへんじゃ、たいへんじゃ。わしの家には、聖徳太子の木の仏像がふってきたわい」と言って、義助は、村じゅうさけんでまわりました。
それを聞いた村人たち、どんどん義助さんの家に集まってきました。
義助さんの家でも、さいだんを作り、おそなえものをして、おまいりしました。
村人たちは、ひと目『お太子様』を見ようと、ざしきをのぞきこんでいました。
ある村人は、
「りっぱな仏像さんだナァ。家のたからになるぞ。わしの家にもふってきてくれんかナァ」とつぶやきました。
村中は、とにかくふってきた仏像でおまつりさわぎで、おおにぎわいとなりました。
そして、村人はだれからとなく、
「ええじゃないか。ええじゃないか」と、おどり始めるしまつです。なかには、ふんどしひとつになって、おどる人や、酒を飲みすぎて、けんかをしだす人まででてきて、もう、メチャクチャになってしまいました。
義助さんは、だいじな仏像がこわれるのではないかと、仏像をしっかりだきしめていました。
村のさわぎもおさまったころ、義助さんの家にある仏像は、村の通明寺にあづけられ、村の守り神様のひとつになったそうです。
めでたし、めでたし。