稲沢のむかしばなし おもかる地蔵
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きみは、お地蔵さんって知っていますか。
町はずれの道のはしなどに立てられている、おぼうさんのかたちをした、石ぞうです。
むかしから、お地蔵さんにおねがいすると、ねがいごとがかなうといわれています。
今から、70年ほどまえのこと。ある村にお照(てる)、源太(げんた)とよぶ親子がすんでいました。生活(せいかつ)はまずしかったが、二人はなかよく、まじめにくらしていました。
おとうさんは、源太が6さいのとき、じこでしんでしまいました。それからは、おかあさんの手ひとつで、そだてられました。だから源太は、大きくなったら、親孝行(おやこうこう)をするんだと、いつも心にちかい、おかあさんのてつだいをよくやり、夜はおそくまで、勉強(べんきょう)にはげみました。
そして、せいせきは、学校中でもいつもいちばんでした。
いよいよ小学校を卒業するある日のこと、おかあさんは、先生から学校へ来るように、いわれました。先生は、「おかあさん、源太くんは小学校だけでおわるのはおしい。ぜひ、上の学校へいかせてみたら、どうでしょうか」といいました。おかあさんは、先生のことばにびっくり。でもまずしいので、行かせてやれないことを、話しました。
おかあさんは、どうしようかとまよいながら家にかえり、源太にこのことを話しました。すると源太は、
「おかあさん、ぜひ行かせてください」と力強くさけびました。
あくる朝、おかあさんは源太のねがいをかなえてやろうと、たいせつにしていた着物(きもの)をうって、お金にしました。
またその夜から、村はずれのお地蔵さまに、
「どうか源太が、テストに合格(ごうかく)しますように」
と、おまいりに行くようになりました。
それも、みんながねしずまった、真夜中(まよなか)の2時ごろでした。それは、おまいりするすがたを、ほかの人に見られたら、ねがいがかなわないと、いいつたえられていたからなんです。
おまいりは、雨の日も風(かぜ)の日も、一日も休まずに、つづけられました。おかあさんの手や足はまっ赤にはれあがり、血(ち)が出ていました。
いよいよテストの前の夜、おかあさんはさいごのお願いに、やってきました。
「わたしのねがいをかなえていただけるのでしたら、お地蔵さまをもち上げさせてください」
といい、格子(こうし)から手を入れて力いっぱいもちあげました。
するとふしぎなことに、もち上がらぬはずのお地蔵さまが、らくらくともち上がったのです。
つぎの朝、源太は、テストをうけ、みごとに合格しました。その後源太は、おかあさんにかんしゃするとともに、いっしょうけんめい勉強して、立派な人になり、おかあさんをたいせつにしたということです。